試作の前提として、何を検証するのかを明確に設定することが最重要です。レンズ設計では「光学性能(MTF、収差、色収差など)」「材料選定(耐久性、対候性など)」「構造的マージン(筐体との干渉やアライメント)」「ユーザビリティや環境条件(温度、振動耐性)」といった目的を、設計初期段階で定義することで、試作の評価軸と設計の方向性がぶれなくなります。こうした要件を設計スペックとして書き出し、仕様書に反映することで、試作段階での精度向上と効率化が期待できます。
レンズ設計では、「焦点距離」「F値」「解像度」「収差特性」「サイズ/重量」を定義する一方で、製造可能性も同時に検討する必要があります。例えば、レンズの面精度や偏心公差、厚み公差などがどこまで試作品で再現可能かをプロトタイプ設計時に確認します。これにより、理論設計と実装可能性のギャップを最小限に抑えることが可能となります。
試作前に光学シミュレーションツールを使い、「PSF(点拡がり関数)」「MTF」「波面誤差」などを定量的に評価・補正します。これにより試作なしで光学性能の評価が可能となり、非理想的な挙動の早期発見が可能です。また、試作回数の削減にも寄与しコストダウンにもつながります。
試作時には、切削加工、射出成形、精密ガラスモールドなどの製造法を選択します。完成後はMTF計測装置等を使って光学性能を評価し、設計とのズレを測定します。さらに、組立偏心や環境変化に基づく誤差を評価してトライを繰り返すことも、量産時を考慮した設計には重要となります。
光学構成だけでなく、レンズと筐体・ホルダーの干渉や光軸維持、迷光対策も考慮する必要があります。光学と機械設計の連携により、レンズ間距離や固定方式、温度膨張による光軸ズレ等を統合設計できます。統合評価があまいと、量産段階でのコストが増大するリスクがあります。
量産を考慮した最適な試作を行うためには、設計段階で構造部門と密接に協調することが重要となります。
続いて実際に当社が光学機器の設計・開発を行った事例をご紹介いたします。
製造業向けリモートメンテナンス用ARグラス 設計開発
製造現場で使用されるリモートメンテナンス用のARグラスを開発した事例になります。ARグラスの開発にあたりお客様には以下の課題がありました。
従来他社製のARグラスを使用されていましたが、対象装置のメンテナンスの際にオペレータの指示表示が小さく、視覚的に見にくいため・・・
光学レンズ設計の基礎知識をまとめた技術ハンドブックのダウンロードが可能です。以下よりダウンロードをお願いいたします。