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光学レンズ設計の基礎

光学レンズの基礎:種類や役割

光学レンズは、光を屈折させて集光したり、発散させたりすることで、像を結んだり、光の方向を変えたりする光学部品です。カメラ、顕微鏡、望遠鏡など、光学機器には欠かせない部品です。

レンズは、形状や材質によっていくつかの種類に分類されます。ここでは、代表的な光学レンズの種類と、それぞれの役割について解説していきます。

1.レンズの基本的な形状

レンズの形状は、大きく分けて凸レンズと凹レンズの2種類があります。

①凸レンズ

中央部分が厚く、周辺部分が薄いレンズ。光を集める働きがあり、集光レンズとも呼ばれます。

また、レンズの裏表2面の形状により、大きく下記に分類されます。

両凸レンズ:2面とも凸形状です。

平凸レンズ:片側1面が平面です。

凸メニスカスレンズ:片側が凹レンズ。凸側の曲率が凹側より小さいです。

 

②凹レンズ

中央部分が薄く、周辺部分が厚いレンズ。光を広げる働きがあり、発散レンズとも呼ばれます。

また、レンズの裏表2面の形状により、大きく下記に分類されます。

両凹レンズ:2面とも凹形状です。

平凹レンズ:片側1面が平面です。

凹メニスカスレンズ:片側が凸レンズ。凹側の曲率が凸側より小さいです。

 

③球面レンズと非球面レンズ

一般的なレンズの面形状は球体の一部を切り取った球面の形状をしています。しかし、収差(理想的な光学性能からのずれ。1点に集光しないなど)が大きいという課題があります。一方で非球面レンズはレンズ面の形状が球面でなく、その収差を小さくすることができます。

2.その他の光学レンズ

光学機器に使用されている、代表的なレンズの種類をいくつか紹介します。

①アクロマティックレンズ

色収差を補正するために、色分散が異なる材料のレンズを貼り合わせた組み合わせレンズです。ガラスの屈折率は波長により値が異なるため、色(波長)により、光を曲げる力が異なります。そのため、様々な波長が入射した場合、波長により集光位置が異なります(色収差)。波長による屈折率変化が異なる材料を組み合わせることで各レンズの色収差を打ち消し合わせることで、色収差を補正することができます。

③シリンドリカルレンズ

これまでのレンズは中心軸に対して軸対称の形状を持ったレンズであったのに対し、シリンドリカルレンズは、1つの方向にのみ曲率を持ったレンズです。そのため1方向のみ集光や発散機能を持ったレンズです。球面平凸、平凹シリンドリカルレンズが一般的であるが、前述と同様に両凸、両凹、メニスカス等のシリンドリカルレンズも存在します。

③ロットレンズ

円柱形のレンズ。シリンドリカルレンズの一種です(両凸シリンドリカルレンズ)。入射光をライン上へ集光したり、レーザー入射させライン上に広げることができます。

④ボールレンズ

球体のレンズです。両凸球面レンズの一種です。焦点距離が短い特徴を持ちます。

 

フレネルレンズ

一般的な凸レンズは中央が厚く、レンズの端が薄い形状であり、中央の厚みの分体積が大きくなります。フレネルレンズは表面形状を分割すること、でレンズの厚みを薄くしたレンズです。

アレイレンズ

レンズを1次元方向や2次元方向に並べたレンズです。代表的なものにフライアイレンズ(光源を均一に広げるレンズ)やマイクロレンズアレイ(光源を均一に広げる、HUD等の内部のスクリーンに使用)があります。

⑦回折レンズ

光の回折現象を利用したレンズです。シート状の微細な構造により光を回折させることでいろいろな性能を持たせることができます。フレネルレンズと同様に薄型のレンズが実現できます(下記は凸レンズの回折レンズの例)。

その他

上記以外にも、アキシコンレンズ(入射光をドーナツ状へ変換)、Grinレンズ(レンズ内の屈折率変化により光路を制御)、FΘレンズ(主にレーザープリンターに使用される)、トロイダルレンズ、ミラーレンズ(曲面ミラーで光を反射させて光を制御)等様々なレンズがあります。

 

3.レンズの役割と用途

レンズは、その種類によって様々な役割を担います。

集光

光を集める性質であり、主に凸レンズの性能です。光ファイバーへのカップリング(1点へ集光する)、照明用レンズ(発散する光をあつめる)、老眼鏡(集光の補佐)など光を集める光学機器に利用されます。

発散

光を広げる性質であり、主に凹レンズの性質です。凸レンズなどその他のレンズと組み合わせて使用することが多いが、身近な使用例としては近視用メガネに利用されています。

結像

1点から出た光を1点へ集光する性質。レンズは光を屈折させることで、物体の像を結ぶことができます。カメラやプロジェクターなど、像を映し出す光学機器に利用されます。

 

4.レンズ設計の重要性

光学機器の性能を最大限に引き出すためには、適切なレンズ設計が不可欠です。主な設計パラメータとして①レンズの形状(球面・非球面・自由曲面)②材質(様々な性質をもったガラスや樹脂材料が開発されている)③レンズの枚数と配置(どのような形状のレンズを何枚使用して、どのように配置するか)④コーティングなどを最適化することで、収差を抑制し、高品質な画像を得ることができます。

また、理想の配置での性能だけではなく、レンズ製造誤差、組み立て誤差、熱による影響等、公差に強いレンズも考慮する必要があります(考慮せずに設計した場合、実際に製造したとしても、組み立てすることが困難なレンズ系となってしまいます)。

レンズ設計には、光学シミュレーションソフトなどのツールが活用されます。これらのツールを用いることで、レンズの性能を事前に評価し、設計の精度を高めることができます。