技術情報・技術コラム

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光学レンズ設計の基礎

光学レンズ設計とコーティングの関係

光学レンズ設計の基礎

光学レンズ設計は、光がレンズを通過する際の屈折や反射を緻密に計算し、目的とする場所に、いかに鮮明で正確な像を結ぶために行います。

具体的には以下のような設計プロセスがあります。

  1. 素材の選定

光の透過率や屈折率、分散特性などを考慮し、最適なガラスやプラスチックを選びます。

  1. 面形状と厚み、レンズ枚数の決定

レンズ一枚一枚の面形状や厚み、そして複数枚のレンズを組み合わせることで、光の進路を精密にコントロールします。

  1. 収差の補正

色のズレ(色収差)や像の歪み(球面収差など)といった、光学設計上の課題を可能な限り取り除き、クリアな像を結ぶことを目指します。

このように、光学レンズ設計は、単に形を作るだけでなく、光の物理特性を深く理解し、計算し尽くされた上で成り立つ高度な技術です。

当社では光学レンズ設計・加工支援を行っています。具体的には下記をご覧ください。

>>光学レンズ設計・加工支援

 

光学コーティングの基礎

レンズそのものの性能を決定づける光学レンズ設計に対し、光学 コーティングは、そのレンズの潜在能力を最大限に引き出し、さらに付加価値を与える技術です。レンズ表面に、ナノメートル単位の極めて薄い膜を何層にも形成することで、光の振る舞いをコントロールします。

光学 コーティングの主な役割は多岐にわたります。

  1. 光透過率の向上(反射防止)

レンズ表面での不要な光の反射を抑え、光の透過率を劇的に向上させます。これにより、ゴーストやフレアの発生を抑制し、コントラストの高いクリアな像が得られます。

  1. 特定の波長の吸収・反射(フィルター機能)

特定の波長(色味や紫外線、赤外線)だけを透過させたり、逆に反射させたりすることで、用途に応じたフィルター効果を持たせることができます。

  1. 表面保護

キズや汚れがつきにくくする撥水・撥油コーティングや、耐摩耗性を高めるコーティングなど、レンズの耐久性を向上させます。

反射防止膜(ARコート)から誘電体多層膜、そして撥水・撥油膜まで、光学 コーティングの種類は豊富であり、それぞれがレンズに特定の機能を与え、性能を飛躍的に向上させているのです。

 

光学レンズ設計とコーティングの関係

光学レンズ設計と光学 コーティングの連携が重要な理由について解説します。光学レンズ設計だけ、あるいは光学コーティングだけでは実現できない性能があるというのが理由の一つです。

具体的に説明すると、

  1. 光学レンズ設計で最先端のレンズを設計したとしても、表面での反射が大きければ、光が十分に透過せず、本来の性能を発揮できません。ここで光学 コーティングの反射防止技術が加わることで、明るく設計通りのクリアな像が得られるようになります。
  1. 特定の波長だけを通すような特殊な用途の場合、光学レンズ設計で最適なレンズ形状を追求しつつ、それに合わせた最適な光学 コーティングを施すことで、狙い通りの分光特性を実現します。(赤外カメラ、LiDAR等、特定の波長を使用するシステムで用いられています)

このように、光学レンズ設計と光学 コーティングは、互いの特性を理解し、密接に連携することで、単体ではなし得ない高い次元の性能と機能を実現しています。

当社の光学機器の設計・開発事例

続いて実際に当社が光学機器の設計・開発を行った事例をご紹介いたします。

製造業向けリモートメンテナンス用ARグラス 設計開発

製造業向けリモートメンテナンス用ARグラス 設計開発

製造現場で使用されるリモートメンテナンス用のARグラスを開発した事例になります。ARグラスの開発にあたりお客様には以下の課題がありました。

従来他社製のARグラスを使用されていましたが、対象装置のメンテナンスの際にオペレータの指示表示が小さく、視覚的に見にくいため・・・

>>詳しくはこちら

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光学レンズ設計の基礎知識をまとめた技術ハンドブックのダウンロードが可能です。以下よりダウンロードをお願いいたします。

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