一般的な凸レンズが一点に光を集束させるのに対し、アキシコンレンズは光軸上に線状の焦点を生成します。具体的には、平らな面と円錐状の凸面を持つレンズであり、この形状がコリメート光をリングに変換したり、ベッセルビームという特殊な光線を生成したりすることができます。
ベッセルビームは、ベッセル関数と呼ばれる数学関数に基づいて形成される光ビームの一種で一般的なレーザービーム(ガウシアンビーム)とは異なり、中央の明るい中心軸の周囲に同心円状のリング構造を持つという独特な分布をしています。
平凸アキシコンレンズの最大の特徴は、入射した光をベッセルビームへと変換する能力にあります。この変換は、レンズの円錐状の凸面によって光の屈折が特異なパターンで生じることに起因します。
通常のレンズでは光線は一点に集束しますが、アキシコンレンズでは光線が光軸と交差し、線状の焦点を形成します。この結果、レンズの後方には、中心部に高強度の光を持ち、周辺に同心円状のパターンを持つベッセルビームが生成されます。ベッセルビームは、伝播中に回折が起こりにくく、障害物によって光線が遮られても自己再構成する性質を持ちます。
平凸アキシコンレンズは、その円錐面の頂角によってさまざまなバリエーションが存在します。頂角が小さいほど、より長い焦点距離と細いベッセルビームが得られます。一方、頂角が大きいと、短焦点でより広範囲に光を分布させることが可能です。
平凸アキシコンレンズの最大のメリットは、ベッセルビームによる独特な光制御です。この特性により、レーザー加工においては、深穴加工や高精度な切断が可能となり、医療分野では、眼科手術や光線力学療法において、組織への精密な光照射が実現します。計測分野では、三次元計測や干渉計において、高精度な測定が可能となります。
しかし、デメリットも存在します。アキシコンレンズは、通常のレンズに比べて製造が難しく、コストが高い傾向があります。また、ベッセルビームの特性上、光軸からの距離に応じて光強度が変動するため、均一な光強度が必要な場合には追加の光学素子が必要になることがあります。さらに、レンズの頂角や材料の選択を誤ると、期待される性能が得られない場合もあります。
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