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光学レンズ設計の基礎

光学レンズの種類:ボールレンズ

ボールレンズとは

ボールレンズは、文字通り球状の形状をした小型の光学レンズです。一般的な凸レンズとは異なり、ボールレンズは全方向に対して対称な形状を持つため、光の集光やコリメート(平行な光)に特有の利点を提供します。

特に、通常の凸レンズ(単レンズ)よりも短い焦点距離が得られる特徴があり、外径を小径化かつ高屈折率材料を用いることで更なる短焦点距離化が可能です。また、球の一部を平面に加工した半球レンズは、よりコンパクトな光学系が求められるアプリケーションに適しています。これらの特性により、小型で高効率な光学システムにおいて、ボールレンズはその性能を最大限に発揮します。

ボールレンズの仕組み・原理

ボールレンズの基本的な原理は、球体を通る光の屈折に基づいています。レンズに入射した光は、レンズの材質と空気の屈折率の違いによって進行方向を変え、レンズ内部で集光またはコリメートされます。ボールレンズの対称性により、入射する光の角度に依存せず、安定した光学特性が得られます。焦点距離は、ボールの半径と材質の屈折率によって決まり、小さな半径のボールレンズは非常に短い焦点距離を実現できます。

ボールレンズの種類

ボールレンズには、様々な材質とサイズがあり、用途に応じて最適なものが選択されます。一般的な材質としては、ガラス、サファイア、シリコンなどが挙げられます。ガラスは可視光から近赤外光までの広範囲な波長域で使用され、サファイアは高い硬度と耐熱性を持ち、高温環境や高出力レーザー用途に適しています。シリコンは赤外光の透過率が高く、赤外線センサーや赤外線通信に用いられます。

また、ボールレンズを半分に切断したハーフボールレンズや、非常に小さなマイクロボールレンズも存在します。ハーフボールレンズは、特定の光学系においてより効率的な光路設計を可能にし、マイクロボールレンズは、微小光学系や内視鏡など、小型化が求められる用途に使用されます。

ボールレンズのメリット・デメリット

ボールレンズの最大のメリットは、その小型性と集光・コリメート効率の高さです。医療機器においては、内視鏡などの小型光学デバイスにおいて、高解像度の画像取得に貢献します。産業用計測機器においては、センサーやバーコードリーダーにおいて、小型化と高性能化を両立させます。 一方、ボールレンズにはいくつかのデメリットも存在します。球面収差が比較的大きく、高精度な光学系においては補正が必要になる場合があります。また、微小なボールレンズの製造や取り扱いは技術的に難しく、コストが高くなる傾向があります。さらに、ボールレンズは小型であるため、光軸調整や取り付けに高度な精度が求められます。

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