品質管理は、製品やサービスの品質を確保するための体系的な取り組みとして進化してきました。初期は検査中心で、不良品を排除することが目的でしたが、20世紀中頃に統計的品質管理や品質保証が導入され、予防型へ移行しました。近年はISO規格やTQM(総合的品質管理)など、継続的改善と顧客満足を重視する方向に発展しています。
品質管理の歴史は、産業革命にまで遡ります。18世紀後半、工場で大量生産が始まると、製品の均一性を確保する必要が生じました。当時の品質管理は、職人の技能に依存する「検査型」であり、製品完成後に不良品を選別する方法が主流でした。
20世紀初頭、フレデリック・テイラーによる科学的管理法が登場し、作業の標準化が進みました。これにより、品質管理は「作業手順の統一」によって安定化を図る方向へ進化しました。しかし、この時代も依然として「不良品を見つける」ことが中心で、予防的な考え方は未成熟でした。
1920年代、ベル研究所のウォルター・シュワートが統計的品質管理(SQC)を提唱しました。これにより、品質管理は「検査」から「工程管理」へとシフトします。統計的手法を用いて工程のばらつきを管理し、不良品の発生を未然に防ぐ考え方が広まりました。
第二次世界大戦中、軍需産業で大量生産と高信頼性が求められたことで、品質管理は飛躍的に進化しました。アメリカでは品質保証(Quality Assurance)の概念が確立し、製品の信頼性を保証する仕組みが整備されました。
戦後、日本企業はアメリカから統計的品質管理を導入し、全社的品質管理(TQC)へと発展させました。特にデミング博士やジュラン博士の指導により、日本企業は品質を経営の中心に据え、「品質は企業文化」という考え方を確立しました。この取り組みが、日本製品の国際競争力を飛躍的に高め、1980年代には「日本品質」が世界の代名詞となりました。
1987年、ISO 9000シリーズが制定され、品質管理は国際的な標準化の時代に突入します。企業はグローバル市場で競争するために、国際規格への適合を求められるようになりました。これにより、品質管理は単なる製造現場の取り組みではなく、経営システム全体の課題となりました。
現在、品質管理は品質マネジメントシステム(QMS)として体系化され、ISO9001やIATF16949などの規格に基づき運用されています。また、製品の安全性や環境対応など、品質は「リスク管理」と密接に結びついています。
IoTやAIの進化により、品質管理はリアルタイムでデータを収集・分析し、予測型品質管理へと進化しています。AIによる異常検知、ビッグデータ解析、デジタルツインなどの技術は、従来の「検査型」から「予防型」への転換を加速させています。
品質管理は、検査中心の時代から統計的管理、全社的管理、そしてデジタル化へと進化してきました。今後は、AIや自動化技術を活用し、不良ゼロを目指す予防型品質管理が主流となるでしょう。品質管理の歴史を理解することは、未来の品質戦略を描く上で不可欠です。

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